ジャッキーの詩才
corgiville (2012年6月18日 00:07)
ジャッキーは少女の頃から物を書くことが好きで、またたいへん筆まめだったようです。
新婚時代の1953年10月にスティーフン・ビンセント・ベネーの詩「ジョン・ブラウンの遺骸」を引用し、夫ジョンに捧げる詩を書きました。
ジョンはことのほか喜んで出版したいと申し出たそうですが、ジャッキーはこれは「ラブレターのような私的なもので他の人にみせるつもりはない」と断ったといいます。
マサチューセッツにありて
ジャック・ケネディは夢想した
(1953年10月 挙式後1ヶ月の頃)
マサチューセッツにありて
ジャック・ケネディは夢想した。
ケープ・コッドの浜辺をあるき
将来(ゆくさき)のおのが姿を夢想した。
ニューイングランドの 秋の息吹につつまれて
脳裏には輝かしい郊外をうかべる。
愛国者が誇らしく口にしたユンカード
レキシントンにバンカー・ヒル
プリマス、フェルマス、マートンズ・ヒル
ウィンズロップ、サレム、ローウェル、リベリー
クインシー、ケンブリッジ、
ルイスバーグ・スクエア
これぞ夢をはぐくむ彼の遺産─若者が
天にささやく大志の数々。
過去が手をのばし彼をつつみこもうとする
その感触をいとおしみつつ、彼はとまどう。
いまはまっとうすべきやくわりがあるからだ
天命であり、おのが欲求(のぞみ)でもある役割が。
彼はニューイングランドの産
頑強で、プリマス岩のごとくゆるがない
両足はしっかと大地を踏みしめる
だが心と夢は、天をかけめぐる。
ニューイングランドを わが祖国
わが信条とよびながら
彼には 異国の血もまた流れている。
アイルランドの丘に向かって哄笑し
アイルランドのせせらぎに
耳傾けた あの種族の
緑の国の軽快(かろやか)さを 血にみなぎらせ
タラ、キラーニーの 魔法の水を
あまりにも誇りたかい 心にたたえ
ニューイングランドの気風を
がっしと 打ち込んだ
そんな彼を 人は
最後の騎士にさえ 見られなかった
思慮深い 真摯な、とよぶ。
彼はいま浜辺から ふりかえり
わが家を 見た。
緑の芝生に立つ 白亜の館
砂上ひくく 草がなびき
わらいさんざめき 木陰にいこうは
弟たち、妹たち。
やがて 灯がともり 夕餉(ゆうげ)のベル鳴り
王なる父の待つ 家に戻る時が来る。けれどいま彼は 風と海と
将来(ゆくさき)のおのが姿と ともに 立つ。
やがて 王国を 築き
息子たちを もつだろう。
本流の流れるところに
人々は よりつどうだろう。
そこに 愛を見出すとも
安らぎは ないはずだ。
金の羊毛を 見つけるまで
前進しなくてはならないのだから。
将来(ゆくさき)の彼の姿が
風と海の中に 浮かんでいる